《MUMEI》 膨らむ妄想僕は陽菜の家の裏で、陽菜を虐めて満足していた。 気付くと、家の中は静かになっていて、僕はアパートの前に戻ったけど、夕方になっても陽菜は出て来なくて、僕は仕方なく自分の家に帰った。 今日はいっぱい怒られたから、外で遊ぶ元気なくなっちゃったかな…。 そんなことを考えながら帰ってると、家の前に陽菜の姿が見えた。 僕の家の前でしゃがんでいた陽菜は、僕に気付くと走ってきた。 「出掛けてたの?」 僕は頷いた。 「そっか、公園に行ってもいないから心配しちゃった」 陽菜は、そう言って笑った。 さっき泣き叫んでた筈なのに、その笑顔はいつも通りだった。 さっき泣いてたのは、陽菜だよね…? 僕は混乱した。 「遊びたかったけど、遅くなっちゃったし…また明日だね」 「あ、あの!」 帰ろうとする陽菜を、僕は呼び止めた。 「ん?」 「ひ、陽菜ってさ、怒られたこと…ある?」 陽菜は少し動揺してるようだったけど、すぐに笑顔になった。 「あるある、あたしなんて怒られてばっかだよ」 そして、すぐに心配そうな顔をした。 「眞季…怒られたの?」 僕は陽菜の質問には答えずに、聞いた。 「ど…どうゆうときに…怒られるの?」 陽菜は少し困った顔を、している。 陽菜…言っていいよ。 誰にも言わないから。 僕にだけ陽菜の秘密教えて? 僕は心の中で、陽菜に語り掛けた。 だけど陽菜は、 「あたし、すぐ怒られちゃうから…わかんない、いろいろだよ」 と言って笑った。 その日から僕は、陽菜の家の裏に行くようになった。 陽菜の家に、高校生くらいの人たちが入ると、陽菜の泣き叫ぶ声は、いつも以上に激しくなった。 陽菜の家で、なにが起きてるかわからなかったけど、僕は陽菜の泣き叫ぶ声だけでも満足できた。 それに陽菜は、泣き叫んだ日は必ず、僕を探しに来てくれた。 どんなに泣いてても、僕の前では普段通りだったけど、僕の隣に座る陽菜を見ながら、いじめるところを想像するのも好きだった。 前へ |次へ |
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