《MUMEI》
かんさつ 4
 「では!地球観光に出かけたい思う!」
翌日・早朝
九重宅で高らかにその宣言は成された
同じ様な姿をした地球外生命体が四匹横一列に並び窓の外を眺め見る
朝から騒々しい、とコーヒーを片手に眺めていた九重だったが
不意に、気に掛る事があった
「……ちょっと待て、お前ら」
「何だ?主殿」
「何所に、行く気だ?」
「観光しに外へだが?」
何か問題でも、とさも不思議気な顔
九重は心からの溜息を一つ付くと、くさ達一行を自身の前に正座で座らせた
「……いいか、よく聞いとけよ」
「何だ?」
「……地球外生命体が雁首揃えて出掛けようとするな!見つかったら大事になるだろうが!」
息を切らせながら怒鳴り散らしてやれば
くさは瞬間黙り込んでしまい、だがすぐ様満面の笑みを浮かべて見せる
「何だ、そんなことか。主殿、安心されい」
何か良案でもあるのか、自信気なくさ
何やらごそごそし始め、その様子を窺っていると、何やら風呂敷の様な布を広げて見せた
一体それは何なのか、怪訝なこれで聞いてみれば
「これは(身隠し君)だ」
「は?」
行き成り取って出してきたソレに怪訝な顔をして見せれば
くさは自信満々にソレを被る
「見てくれ、主殿!」
「……見てる」
「見事に身を隠せているだろう!?」
更に自信満々なくさ
だがその実、全くと言っていい程に身など隠せてなどおらず
九重は深々しい溜息をついてしまう
「……却下だ」
「何故に!?」
「当然だろうが!そんな形で外に出てみろ!余計に目立つだろうが!!」
「主殿のケチ!ならば我々はずっと家の中にいなければいけないという事か!?」
それはあんまりだ、とくさだけではなく総出での抗議
騒ぐばかりのくさ達に僅かばかり殺意を覚え掛けたころ
「……智一さん」
鈴が徐に九重の袖を引く
何かと向き直ってみれば
「ピクニックなんてどうですか?」
バスケットを抱えて見せながら提案してくる
「くささん達には窮屈かもしれないけど此処に入って貰って、人がいなさそうなところに行ってみましょう」
「当ては?」
「近所の自然公園とか。余り人が来ないのでいいかと思うんです」
どうでしょうか、と上目遣いで見上げられてしまえば九重に否は唱えられない
「……人が来たら、すぐ帰るからな」
「ありがとうです。智一さん!」
満面の笑みで礼を言われてしまえばそれ以上何もいえず
だが鈴が子供たちと喜んでいる様を眺めながら、九重は苦笑を浮かべて見せたのだった……

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