《MUMEI》
キーホルダー
「前嶋って好きな子いたんだ?」

「…うん」



結局どん底に落とされたのは一緒な訳で。

そりゃそうだよ。

俺が前嶋に恋してるみたいに前嶋だって恋してたって可笑しくない。

つか、寧ろ普通…。

「高原はいる?好きな子…」


「……、ぅん…、まあ…」


「両想いになれるといーな、お互いに」


「…そうだね」





前嶋はきっとなれるよ。


俺は、無理だけど。





だって今…失恋したから…。



すると前嶋は歩きながらスクールバッグに手を突っ込み、がさがさと手探りで何かを捜しだした。



「俺ね、好きな奴から貰ったキーホルダー、ずっと持ち歩いてんだ」


「へー…、そうなんだ」




――なんだ。




物貰ったりとかしてるんじゃ、もう両想いなんじゃないの?


「試合の時もお守り代わりに持ってたんだ、…俺の宝物なんだ」


そう言うと前嶋は立ち止まった。


「ほら…」



前嶋は俺にキーホルダーを見せてきた。



俺は見たくなかったけど…



頑張って、呼吸も頑張って…



俺の胸の高さに伸ばされた前嶋の指先を見た。







「…あ…」

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