《MUMEI》

少女は眠たそうにまぶたを擦りながら起き上がってきた。

さらさらしていそうな長い金髪に、整った顔立ち。あどけなさが溢れ出ているのは身長のせいだけでは無さそうだ。少女というよりも幼女だろうか。

それと、尖った耳。

「エルフかー」

本を小脇に抱え、一歩踏み出す。

足音で目を覚ましたのか、急にこっちに向いた。

男を見るなりひどく怯えた表情になり、机の陰に駆け込んだ。第一印象は最悪らしい。

あの嫌われようだ、近付くことは出来ないだろう。

距離はあるが、屈んで目線を合わせる。

「大丈夫だ、問題無い」

今出せる会心の笑顔を出したはずだ。痛みでひきつっているかも知れないが。

しかし少女は反応すらしなかった。強いて言うなら更に怯えられた上に首を傾げられた。

困った。たぶん、言葉が伝わってないのだろう。

男は抱えていた辞書をめくり、言葉を探す。

「これか? とりあえず言ってみるか」

調べたその言葉を吐き出した。

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