《MUMEI》
夢見る
★16


 ――え? え? 誰?

 海底に沈んで、すっかり諦めていたあたしの唇に温かく優しい唇が触れて、その唇から一気に空気を与えられたの。

 ――あ! 空気って、こんなに美味しかったのね……

「あたしのファーストキスは、優しく温かい人工呼吸だったわ。うふふ、懐かしい」

 ――優しく優しく、その温かい唇から、たくさん、たくさん、温もりに満ちた美味しい空気を与えてもらいながら……

 あたしは強く抱きしめられつつ、フワフワと明るい海面の方へ導かれていたの。




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