《MUMEI》 少女は書かれたものを見、ペンを奪い取り、それのすぐ下に文字を書いた。 男は首を傾げ、辞書を見る。似たようなものばかりでよく分からないからだ。 彼女は更に彼の頼みの綱である辞書まて奪い取った。 唖然とする彼をよそに、すごい早さでページをめくる。 目的の所付近まできたのだろう、めくる速度が遅くなった。 ぴたりと止まり、とある一文を指差して見せてきた。 「これがこの文?」 首を横に振られ、意味する部分をペンで線引きされる。 納得したのを確認し、またものすごい勢いでページをめくり始めた。 3回くらい繰り返し、彼女の書いた一文の意味を訳する。 「えーっと…要するに教えてくれるのか?」 誇らしげにまな板を見せつけているあたり、そういう事らしい。 とりあえず今紙に書いてある事の意味は理解した。 それに辞書とこの子のお陰で、何とか意志を伝える事は出来るかも知れない。 ただ、実践は難しいだろうが。 前へ |次へ |
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