《MUMEI》
手料理のお話
オレは今、クラスメートの家の前にいる。

聞いて驚くな、相手は女の子。どういう風の吹き回しか知らないが、今日はラッキーだということだ。

(例えそれが罰ゲームのアレであろうと!)

しかも晩御飯をご馳走してくれるそうだ。これはつられざるを得ない。

浮き足立つのを抑えきれなくなり、インターホンを押した。

「あのー、晩御飯喰いに来たんですけどー」

『は?』

マジでテンパってた。舞い上がりすぎだろオレ。頭悪いんじゃね? テストはどれでもいつでも30点だけどね!

「すいません、先走りました。ボクです」

『ちょっとお母さん! ごめんね? すぐに鍵開けるから』

なんだ、お母様だったのか。食いしん坊イメージを刷り込めたと思えば大丈夫だな。

ドタドタと走ってくる音。ガチャリと扉が開き、襟首を掴まれて引きずり込まれた。

(ゑ? なんで?)

「君が原因か」

引きずっていた男が声を出した。優しそうでかつカッコイイ人だ。嫉妬がオレを惨めに変えるっ。

「妹が世話になってるね。今日は食べに来たんだろう?」

何故か慌てている。どうしてだろう?

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