《MUMEI》

リビングだろうドアの前で止まり、やっとオレは立ち上がれた。襟首は掴まれたままだが。靴は廊下に落ちている。

「君は今日、ここに泊まることになるだろう」

意味深な顔でそう言われた。何? 晩飯食って終わりじゃねぇの?

「明日が休日で良かった…」

ドアが開けられ、強引に放り込まれた。入れ違いに母親らしき人が出て行った。

リビングはとても片付いていた。相応に広く、ごく一般的な感じがしてくつろげそうだ。

台所でクラスメートを見つけ、声をかけた。

「お邪魔します。ってかお兄さん? 切羽詰まってたけど、何かあった?」

いきなりの登場に驚いたのだろう、彼女はその場で固まっていた。

彼はキョロキョロと辺りを見回し、尋ねる。

「あのさ、ご飯出来てる?」

その一言で我に返った彼女は、彼に席に座るよう促した。

「こ、この椅子座って!」

「了解した」

指定された場所に座り、後は待つだけだ。

「ちょっと待っててね」

嬉しそうに台所に戻る。あぁ、エプロン似合ってるよ。

この時までは、楽しい食事になると思っていたんだ。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫