《MUMEI》

何故かその手を振り払う気にはなれず、そのまま付いて行くと
連れて来られたのは、ヒトの賑わい溢れる酒場
ソコの常連なのか、周りの客に適当に挨拶を交わしながら近藤は一番奥、カウンターの端へ
「どうした?座れよ」
「何だよ、此処」
「俺の行きつけだ。お前は、ジュースでいいな」
完璧な子供扱いに多少なり腹は立ったが
この男には何を行っても無駄だと、その横へと腰を降ろす
何の為にこんな処に連れて来たのか
その真意が分からず、近藤の横顔を怪訝な表情で眺め見ていた
「……Black stones」
「は?」
丁度運ばれてきた酒を煽りながら近王の呟く声
行き成り何だと睨みつける様なソレを向けてやれば
「……お前、このゲームのルール知ってるか?」
やたら真剣な顔を向けられた
一応知ってはいる
だが興味薄だった羽野に取って見ればそれこそどうでもいいモノで
ゆるり首を振って返す
「……まぁ、そうだろうな」
何にか含みのある近藤のソレに
羽野はまたその理由を乞う様に顔を覗き込んでみる
何故、この男は思わせぶりな事ばかりを口にするのか
一体、このゲーム荷はどんな意味があるというのか
だが、問うてみても明確な返答など無く、それが羽野を苛立だせた
「……っ!」
それ以上何を語ろうともせず酒を煽るばかりの近藤
そのグラスを羽野は無言で横から奪う様に取り
「お、おい。秋夜……」
近藤の制止しようとする声も聞かず、一気にそれを飲み干していた
喉を焼く強いアルコール
噎せ帰りそうになるのを何とか堪えそのままのみ込むと
突然に視界が歪み、身を起して居られなくなる
「……吐けよ」
「は?」
カウンターへと突っ伏し、段々と呂律が回らなくなってしまった羽野
だがすぐに立ち上がり、座った目のまま近藤へと迫り寄る
「……アンタが知ってる事、全部吐け」
膝の上にまで乗り上げ、息が触れる程近く顔を寄せながら迫れば
近藤はさして嫌悪もないのか、平然とした様子で
それどころか、抱いてみれば意外にも華奢な羽野の身体をどうしてか抱きよせる
「話してやてもいいが、タダってのはこちらには不利な条件だな」
「金が欲しいのか?」
「いや。そんなもんは要らん」
ならば何がいると言うのか
ソレまでそう様に歪んでいた近藤の顔に不敵な笑みが浮かび
何を言うより先に羽野の身体を抱きしめていた
「!?」
「……俺と一緒に、B.Sに参加しろ」
「何で?」
「何でも、だ。そしたらお前の聞きたい事全部話してやる」
出された条件に、羽野は、羽野はすぐさまく事はせず暫く考える
近藤の意思、そして本意が読み取れない
それでも後々に解る日が来るのか
もしそうなら近藤の条件を呑んでやってもいいかもしれない、と羽野は肩を揺らす
「わかった。アンタと居ればいいんだな」
「契約、成立だ」
近すぎる程の距離にあった羽野へと触れるだけのキスをしてやりながら
近藤は僅かばかり口の橋を笑みに緩ませたのだった……

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