《MUMEI》

言い終わると同時、雪舟は徐に手を上へと翳して見せる
ソレをまるで合図に、その手の平で様々な天気が一つに混じり合おうと小さな嵐をおこしている
「何、これ?」
見るに解らないソレに首を傾げて見せれば
雪舟は僅かばかり困った風な表情を浮かべて見せ
「……混ざって、しまってな」
「え?」
「……だから、天気が、混ざってしまったと言っている」
その結果がこれだ、と手の平へと視線を落とす
「今はまだ手の平に収まる程度だが何れ嵐に変わる」
その時を想像し、憂う様にソレを眺め見る雪舟
小さく渦巻くソレを桜井も覗き込んでみれば
混ざってしまったとの言葉通り、様々な天気が見え隠れする
「……これ、どうすればいいの?」
首をかしげて見せた次の瞬間
手の平の上のソレが唐突に羽根る事を始め、そして一層高く飛び跳ねる
何事かと眼で追うたのと同時、軽い破裂音を立てソレは弾けていた
「……割れ、ちゃった」
一体どうなっているのか、桜井が首を傾げてみせた
雪舟は何故か深く溜息をつくと、自身の頭上を指差した
「何か、あるの?」
示されるがまま上を見上げて見る桜井
その目の前に、それまでなかったハズの巨大な雲が現れていた
しかもそれは台風の様に渦を巻いていて
一体何事か、慌てる事を始めてしまう
「何、あれぇ!?」
「体風だ。早く何とかせんと街一つ簡単に吹き飛ぶぞ」
軽々しく言われ
当然桜井は慌てる事を始めてしまう
どうすればいいのかを問うてみれば
「(ひまわり)なら何とかできる」
「ひ、ひまわりって私……?」
首をかし問うて返す
再三聞かされるひまわりとは一体何なのか
ソレすら説明されていないというのに、と桜井は動揺の最中にいた
どうすればいいのか、何をすべきなのか
うろたえるしか出来ない桜井を嘲笑うかの様に段々と巨大な台風と化して行くそれ
そして一際強い風が拭きつけたと思えば
ソレは弾けるように目の前から消えてしまっていた
「……暴走したか」
「ど、どうするの!?あれ!」
「安心しろ。こういう時の為にお前がいるんだ」
「はぁ!?何それ!?」
何に安心しろというのか、つい文句を言ってやれば
雪舟は徐には他の皆を集めてくる様言ってくる
何かいい考えでもあるのか、首をかしげて見せる桜井へ
だが雪舟は何を答える事もしない
早くしろ、と急かされ、桜井は慌てて他の二人を呼びに走った
「これは……随分と立派に育ちましたね」
「大きい〜。歩、すごいね」
早雲、ハル、各々にバラバラな感想を述べ
その緊張感のなさに桜井は気が気ではない
「あ、集めてきたけど……」
一体何をしようといのか
全く分からない桜井が戸惑いがちにその旨を告げると
「……ご苦労だったな」
対してその労を労う様子もなく
雪舟は二人へと向いて直り、何か耳元で指示を出した様だった
「人使いが相変わらず荒いですね」
「そう言うてくれるな。頼む」
「御自分で行かれたらどうです?」
「こんな老体に行ってこい、と。鬼か、お前は」
「それが嫌なら頭数に早雲を貸して下さい」
「それなら構わん。早雲」
雪舟呼び掛けにまるで答えるかの様に
その手の平へ小さな雲の様な何かが現れる
一体何なのか
まじまじと顔を近づけ覗き込んでみれば
「おいこら、爺ィ!いつまでヒトの身体使ってるつもりだよ!さっさと返しやがれ!」
すっかり縮んでしまっている早雲の姿があった
丁度、手の平に収まる程の大きさ
暫く呆然と眺めていた桜井だったが、徐に小さな早雲を掌の上へ
「小さいと、ちょっとは可愛いかも」
「ンだと、コラァ!?」
凄んではくるものの小さい姿ではまるで迫力はなく
逆に、今までの仕返しとばかりに指で突いてやる
「テメェ!何する……!?」
「アンタ、私の事からかったでしょ!その仕返し!」
舌を出してやりながら突く事を続ければ
早雲はされるがまま、悔しそうに唸る声を上げ始める
「早雲、歩さん。落ち着いて下さい」
何とかその場をやり過ごそうと間に入ってくる雨月へ
桜井達は同時に振り返りながら、無理だと短く返す

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