《MUMEI》

そう、少女が返事を濁していると、近くの店の人が来て私の腕を引っ張った。

「あんた、ちょっとこっち来なっ。ほらっ、」

「あっ、ちょっと…きゃっ!!」

店の人が、ものすごい力で私を引っ張ったので、体がふらつく。
そして、少女は一瞬自嘲気味に笑うと、どこかへ姿を消してしまった。

「ちょ、……もう、いきなりなにするんですかっ!!!」

私は、手を思いっきり、振り払って、そう怒鳴った。

「なにって…、あんた他国の人だから知らないんだね。
いいかい?……あいつは、“悪魔の子”なんだよ。
あいつに、関わると不幸になるんだ。」

はっ????なに、言ってるの???
あの少年たちだけじゃなくて、大人たちまで、そんなこと言ってるの!!!?
ばかばかしい、ばかばかしすぎるわっ!!
不幸?悪魔?そんなの信じるなんて、ばかばかしい。

「あいつはな、罪人なんだよっ!!!二人も殺して立派な重罪を犯した罪人なんだっ!!!」

―ドクンッ…

鼓動が高鳴るのを感じた。
………。
あの少女が……罪人…?人殺し…???
……ありえない、ウソ…でしょ???

「見た目は、普通の少女かもしれないけど、立派な人殺しさっ!!!!だから、みんなあいつを避けているんだ。
罪人なんかと一緒にいたら、周りから変な目で見られるだろ???だから、あんたも…」

“……それなら、私に話し掛けない方がいい。あと、近づくな。じゃないと…貴女まで、変な目で見られてしまう――。”ふと、少女がさっき言った言葉がよみがえる。
だから、あんなことを…。
“嫌ってないのか?”
きっと、ずっとみんなから、あの少女は批判されて、孤独だったんだ…。
確かに、人殺しは、ダメなことだけど……。
でも、本当にあの少女は、人殺しをしたのかな…???
だって……まだ、ほんの少ししか話してないけど、そんな人殺しするような感じの人ではなかった…。

「でも…たとえ、あの少女が人殺しをしたとしても、関わることによって、周りから変な目で見られることになっても、私はあの少女が…気になるんです。
理由は、わからないけど…気になるから――。
だから、あの娘と、もっと話してみたい、あの娘のこと知りたい――。」

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