《MUMEI》

端っこで落ち込んでいるのを見て、いたたまれなくなり、声をかける。

意味は分かってないようだが、こちらを見てくれた。

あらかじめ書いておいた紙を見せ、意志を伝える。

一瞬だけ嬉しそうな表情になったが、すぐにそっぽを向いた。

なんとか混ざってもらおうと考えていた彼だが、妹が首を横に振る。手に持っていた紙には、「放っておこう」というような文が書かれていた。

姉に対する扱いがひどくないか、と思うが口には出さない。言ったところで通じないのだが。

とにかく彼女には参加して欲しかった。さっき見えた羨望の眼差しが、どうも気がかりだから。

思い切って立ち上がる。しかし痛みに膝を折った。そういえば怪我をしているんだった。

少女が心配そうに顔をのぞき込んできたが、引きつった笑顔で返した。多分大丈夫だ。

多少引きずりながらも姉の後ろまで歩いた。そして手を差し出す。

振り返ったその顔は満面の不機嫌だったが、どこか嬉しそうに見えたのは何故だろう。

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