《MUMEI》
記念写真
‘我関せず’なタイプだった井上が、今し方仲裁に入った事で、他の五人は度肝を抜かれた。


「…あのさ」


そんな男が次に言う言葉は、一体何なのかと皆耳を澄ましているのか、辺りは静まりかえっている。
先程まで言い争っていた洋平と美樹でさえ、息を殺して井上を見ていた。


「折角カメラ持って来てるんだし、どうせ入れないんだったら、せめて記念写真撮ったら?君の欲したがってた心霊写真も、撮れるかもしれないし。」

「あ、そういや…」


首に提げているのに、すっかりカメラの事を忘れていた洋平は、その存在を確認する様に手に取った。


「折角来たんだ、一枚くらい思い出残してもいいんじゃね?」

「思い出かぁ。」

「いいね!中に入れないのは残念だけど、笑いのネタに使えそうだし!」


井上のたった一言で、今度は周りの空気が和みだした。
本当に珍しい。
井上という男は、これ程気の利く奴だったのか?

司は、雨でも降るのではないかとまだ真っ暗な空を見上げていた。









「はい、チーズ!」






自分はいいからと、自ら撮り手に廻った井上がシャッターを押した。


レンズ越しの皆はとても愉しそうで、ピースなんかして…





そんな中、井上だけは小さくほくそ笑んでいた。

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