《MUMEI》

黙っていた妹が喋り出す。今のをきっかけに自分の言いたい事を言っているのだろうか。

意味は全く分からないが、雰囲気で理解しようとする。分かったのは、みんなちゃんと聞いているということだけだ。

気持ちがこもっていたのか、頬が少し紅潮している。それだけ気に入って貰えたのは素直に嬉しい事だ。

父親は考え込んでいるあたり、葛藤しているのだろう。この不審者も同然の男をどうしようかと。

決断が出来ないようで、喋り終えても未だ唸っている。

業を煮やした妹が彼の元に駆け寄る。腕に抱きつき、ねだるような目で父親を見ている。

娘には弱いらしく、彼を飼う事を許可するらしい。親バカでよかった。

ゑ? 飼われるの?

この国での人間の扱いは奴隷らしい。まあ人間の国とそう変わらないか。

魔法の首輪を付けられ、適当な部屋をあててもらった。この家は案外広かった。

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