《MUMEI》
渇いた瞳
沈黙を割るような一つの溜め息が、部屋に流れた。


その吐息の意味する事はなんとなくわかる。


「……はぁ」



また一つ、その音は響いた。



長い時間が流れても、二人の距離は縮まらなかった。

時折、隣から湿った音が響くだけ。


ふと、音を辿る目が顔を捕えた。


恥ずかしそうに目を背け、半開きになったその口元に衝動を覚えた。




「キスしてもいいですか?」

衝動は音となって、溢れ出て行った。

「……いいよ」



小さく、答えてくれた。


額を近付け、顔を傾ける。

少し乾いたその唇は、とても柔らかだった。




初めて触れる他人の唇は、あまりにも甘美で、離れることを忘れてしまいそう。


それは、ちょうど小さな町に初雪の降った夜の事だった…。


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