《MUMEI》 そのある場所はパンフレットには載っていなかった。 「…梓ちゃん?聞いてる?」 「あ…おばさん、ごめんなさい…。ついパンフレットに夢中になっちゃって…」 恥ずかしい…。 おばさん、すごい笑ってるし。 私はパンフレットを一旦閉じて、おばさんの目を真っ直ぐ見た。 「梓ちゃん、鈴堂学園…」 「気に入ったよ!すごい気に入った!私、その学校行きたい!」 嘘じゃなくて、本当に。 パンフレットに載っていない素敵なことが、この学園にはきっとあるはず。 そう思うとワクワクした。 「…ふふっ。良かった。そうと決まれば、今日から色々支度を始めなきゃね」 春から、私はこの学園に通うんだ。 …そして、私が生まれた、この愛知ともお別れ。 …お母さんと…お父さん…と、過ごしたこの愛知とは…。 前へ |次へ |
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