《MUMEI》

オレは、戦っていた。数多の人々が殺し合い、死ぬ場所で。

その真ん中に、オレは居た。周りは敵だらけ、味方も少ないそこに。

それでも身体を張って前に居たんだ。何故かわからない。誰よりも前に、前に進んでいた。

ふと気が付いて振り返ると、さっきまで隣に居たヤツの背中が離れていく。

逃げている…?

理解するのにさして時間は掛からなかった。置いていかれたのだ。

オレも逃げようとして走り出すが、遅かった。もう囲まれている。

持っている武器を使い、道を作ろうとするが上手くいかない。

真っ黒い絶望が心を塗りつぶしてくる。

諦めるしかない。ここで死んでしまうしか。

嫌だ。まだ生きたい。独りのままで死にたくない。

恐怖が、狂気を揺さぶりに来る。

耐えきれなくなり、その場に跪いた。

頭に影が落ちて、顔を上げる。そこには剣を持った騎士が一人。

騎士は右手のそれを振り上げると、オレの首辺りに狙いを付けて。

振り抜いた。

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