《MUMEI》

「七生、新聞は〜……?」
リモコンをやっとで見つけたのに。これではいつまで経っても終わらない。


「ご飯食べてく?」
七生がご飯仕度を始めている。多分この匂いは昨日のカレーの残りかな。


「じゃあ少しだけ」
内館家は父が炊事をしている。七生父のカレーはかなり旨い。



「食べないの?」
ルー多めでご飯少なめに盛られたカレー。俺の胃袋に調度いい量だ。


「……食欲ない。父さんと食べるし。」


「間食しに家に行くくらいだったのに。季節の変わり目だからな、風邪か?」
デコに手を置こうとすると七生に避けられた。


「……ゴメン。」
謝るくらいならそんなことするなよ。俯いて、なんだか苦しそうな顔している。


「俺のこと避けてる?近寄らない方がいいなら俺も気をつけるけど。」
ズバリ言ってみた。


「違う、違うよ。」
七生がテーブルの上に乗っかって、凄い至近距離で向き合った。


「なんだよ。
最近の七生は分からないことばかりだ。離れていくみたいで……なんか、なんか……」
ああ、何言ってるんだ。
馬鹿だ俺は
七生のほんの小さな違いに怯えているなんて。
人間は変わっていくものなのに、知らないことが増えることが不安になる。




泣きそうかも。最近涙脆い

七生が俺の瞼を大きな掌で覆う。温かさに安心して目を閉じれた。



唇に何か押し当たる感覚。

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