《MUMEI》
ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア01
「ケンゴ兄ちゃん!ケンゴ兄ちゃん!
たいへんだよ〜!また、お兄ちゃんがお部屋から出てこないんだよ〜。
あいり、とっても心配なの〜。」


(こんばんは〜)と、おジャマした途端、
突然駆け寄って泣くのはイズルの妹、愛梨ちゃん。
大きな水たまりがふたつ、僕を見て雫を落とした。

「大丈夫だよ〜愛梨ちゃん。
お兄ちゃんが今から呼んでくるから、ここで待ってなね。
大丈夫だからね。」

玄関先で受け止めた体は、
そのままのポーズでうずくまっていた。

(こんなにかわいい妹ちゃんがいながら、お兄ちゃんは何をしてんのかね〜。)
後ろから小さな視線を感じながら、イズルの部屋へ向かう階段を上り、部屋のドアを叩く。

ココまではいつものパターン。

未だに丸型のドアノブだって気付いた時に、それに気付かされる。

「おい、イズル!いるんだろ〜。空けてよ〜。」
もう、何回叩いただろう?
いつも叩いている場所だけ微妙に音が違う。
ちょっと今日は弱めにしとこう。

「なあ、愛梨ちゃんまた泣かせたろ、心配してんぞ〜。」
だいたい、愛梨ちゃんの事を言えばその扉が開く。
呪文のように。

この日もそれで、扉は開いた…

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