《MUMEI》

『無い』

急遽思い付いた計画だったようだ。外に出たかったと供述している。

散歩するにしても、いつも歩くコースというものがあるはずだ。それと、ついで所要時間も尋ねた。

『無い』

今日から日課になるらしい。時間も未定だそうだ。非常に困った。

行く宛がないのではスタート出来ない。とにかく動かなければ、屋敷から追っ手が来そうだ。

気が付けば、怪我の事を忘れていた。もうそれぐらいの所まで回復しているのか。

軽く準備運動をして、各関節の調子をうかがう。多少動きにくいぐらいで、問題は無さそうだ。

自分の準備は済んだので、彼は背中にいる女性が動くのを待った。

しばらく見ていたが、彼女から動く気はないみたいだ。後ろに隠れたまま一向に出てこない。

じっとしていても仕方がないので、彼は一つ提案する。

街の中を案内して貰うのだ。土地勘が微塵も無い者にとってはかなり意味のある行為だ。

いざという時の逃げ道など、教えて欲しい事は沢山ある。

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