《MUMEI》
ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア02
ドアが空いた瞬間、世界中の影を集めたかのような空間が広がる。
そして、イズルは「定位置」へ座る。

「イズル、ありがとう。開けてくれて!」
ケンゴはいつもその言葉とは裏腹に、
部屋の状態を見て絶句する。

カップラーメンの容器やペットボトルが散乱し、テレビゲームは平積みの山になって、今にも雪崩が起きそうだ。

恐らくずっと、つけっ放しであろう
パソコンの前であぐらをかいて
何かをしているイズル。


こっちは、居場所の確保に忙しい。
それとなく、座れるスペースを作ってケンゴは話を始めようとした瞬間、それを制すようにイズルが言葉を発した。

「なぁ、ケンゴ。生きてるって、楽しいか?」
「いきなりどうしたんだ?何かあったか?」

こちらを一切見ずに発した一言は、
冗談なのか本心なのか、この暗い部屋ではうかがい知る事はできない…

影を落とした部屋の中でパソコンのモニターだけが眩しくてケンゴは目を閉じた。
自分で作った暗闇の中で予想外のセリフへの返す言葉を探していた。

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