《MUMEI》 満開桜は僕の夢桜が満開だ。 今吹く風に包まれて、 舞い上がる桜吹雪に包まれて、 僕の想いは夢の中ー。 僕(浅井廉次、あさいれんじ)は今年で中学1年生。 今、中学校の入学式の真っ最中だ。 それにしても、今日はよく晴れている。 そして珍しく、入学式の日に桜が満開だ。 今日は本当に素晴しい日だ。 と思ったが、校長先生の話がやけに長いのが現実だ。 「なぁ、廉次。さっきから同じことばっか言ってねぇ?」 そういってくるのは、幼馴染の友達の畦中祐介(あぜちゆうすけ)。 「うん。何回も同じ単語が聞こえてくる。」 僕はあきれた顔で答えた。 そして、今この場にいる人全員が “話が長い”と思っているだろうとも僕は思った。 僕は外を眺めていた。 舞い上がる桜を見て、ふと思い出す。 華恋は元気かな・・・・? 華恋とは、僕の幼馴染の女の子だ。 2年前に隣町に引っ越してしまった。 僕は彼女を傷つけてしまったのだ。 あの日は、こんな都会に珍しく雪が降り積もった日だった。 「珍しいよね、こんなとこに雪が積もるなんて。」 「そうだね。何年ぶりだろう・・?」 こんな何気ない会話をしていただけだった。 ・・・・・・はずだった。 「ねぇ、廉次は、好きな人いるの?」 「え!?な・・・何でそんな事聞くの?」 僕は華恋の突然の質問に驚いた。 「ん・・・何となく知りたいなぁ・・って思って!」 「お・・・教えるわけないだろう!?」 「じゃぁ、アタシの好きな人誰だかわかる?」 「さぁ・・・・?」 「アタシの好きな人はね・・・・」 僕はその時、華恋の言葉がはっきりと聞き取れなかった。 ただ驚いたからだったかもしれない。 「え!?何?誰だって?」 「だから・・・・!」 その後の、彼女の口は確かに「廉次」と動いていた。 僕は驚いた。一瞬「冗談」という言葉が頭をよぎった。 そして、つい、言ってしまった。 「ははは、何言ってんだ!?冗談だろ、冗談?」 僕はこう言って、彼女の背中を叩いていた。 しかし、彼女の眼差しは真剣だった。 そして少し涙がこみ上げていた。 彼女は、その後何も言わずに走っていった。 そして僕は気が付いた、“傷つけてしまった”と。 それから、彼女とは、会うことがなかった。 冬が過ぎ、春がやってきた。 桜が満開だったあの日、僕は久々に華恋にあった。 そして彼女は、こう言った。 「今までありがとう。楽しかったよ。 アタシは絶対忘れないから・・・・・」 その次の日彼女、華恋は引越して行った。 僕は、謝れずにいた。そう、傷つけたまま・・・・・。 ふと気が付くと、もう入学式は終わりかけていた。 風は止んで、桜はもう舞ってはいなかった。 そして僕も、あの思い出を舞い上がらせるのはやめた。 入学式が終わってから祐介に 「お前途中意識飛んでたぞ!話しかけたのに・・・!! 何考えてたんだよ!?」 と怒られた。 「おぉ、悪ぃ!ただ寝てただけだ!!」 僕は軽く嘘をついたのだった。 言えるわけない。“華恋のことを後悔していた”なんて・・・・。 華恋との思い出は満開の桜の下に置きっ放しー。 次へ |
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