《MUMEI》
しばらくは、晴れ。
朝、それは世界中の人々が1日をスタートさせる時間帯。


ところが、そうでない人々ももちろん存在する。


仏壇に線香をあげ、手を合わせている少女、森島咲もまた、その中の1人だった。


彼女の周りを取り巻く空気は時が止まったかのようになりを潜め、その中心にいる人物が動き出すのをじっと待っていた。


「―――よし」


暫くすると少女は合わせていた手を解き立ち上がる。

立ち上がったときにさらりと揺れた濡れ羽色の髪は方のところで切り揃えられており、アーモンド型の瞳はどこか寂しげに潤んでいる。


玄関のドアを開けると、前日まで続いていた台風が嘘のように塵一つ無い澄んだ青空を見る。


空を見上げていると小学生と思われる元気一杯の笑い声が響き渡る。


その声をBGMに、1人歩き出す。

前へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫