《MUMEI》 ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア04ケンゴは、平積みにされたゲームのタイトルをなんとなく眺めていた。 相変わらず格闘ゲームが好きらしい。 ボサボサの頭をカリカリしながら ケンゴの返答を待っている。 鳥の巣という表現では足りないくらいの髪型になっていた。 その有様を見ていたケンゴは感情をしぼり出した。 「オマエも、もっと強くなれよ。」 …我慢の限界と皮肉に満ちた言葉。イズルは数年前の自分のセリフだなんて気付くことはなかった。 その後12秒間、2人の距離を沈黙がリレーした。 パソコンの風力ファンの回る音だけが聞こえる。 「イズル、ごめん。帰るね。明日、小テストがあるんだ。」 「あぁ…」 ケンゴには幼馴染のカンでわかっていた。 正義感の強さ故、周りに倣ってモノを言うことができない性格。 だから、新しい場所で馴染めてないということくらい安易に察しは付いた。 前へ |次へ |
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