《MUMEI》
偽りの故郷
「私は・・・・」
俺は衝撃を受けた。
神流の言葉が信じられなかった。
何も考えれず俺は固まっていた。
神流の目には涙が浮かんでいた。

“今、時が一瞬止まったように感じたのは、俺だけか?”

風が吹き抜けていく。
気持ちの良い風ではなく、
なんだか、切なく悲しいそっけない風だった。
俺は空を見上げた。
空は雲に覆われていてまるで泣いているようだった。

俺はとりあえず、神流を家につれて帰った。
家に着いた頃には、神流は笑顔だった。
でも、俺の目には“作り笑顔”のように写った。
俺は、2人分の夜ご飯を作りだす。
神流は、ベランダで空を見つめていた。
しばらくして、ご飯が出来上がる。
「神流、できたよ。」
俺はベランダの神流を呼んだ。
神流はクルリと振り返ってこちらへ来た。
「ここに座って。」
「ありがとう・・・。」
なんだか、会話が続かない・・・。
それはそのはず。俺は小学校3年生までしか、
女子と喋ったことがないから・・・。
ど・・・・どうしよう・・・・。
しばらくの間沈黙が続く。
俺たちは一言も喋らないまま、夜ご飯を終えた。
「おいしかったよ。料理上手なんだね。」
神流が突然喋りだした。俺は驚いた。
「ありがとう。でも作れるのは、
 野菜炒めと、カレーと、・・・・・・
 あと・・・あと・・・。お・・お茶漬け!!!」
「何ソレ!?お茶漬け??それ、料理じゃないよ!?」
「あはははは!!」
場の重い空気は一気に軽くなった。
「ねぇ、神流はこれからどうするの?」
「わ・・私は・・・・・。」
神流は返事に困っていた。
「まぁ、いいよ、決まるまでここにいなよ!」
「・・・ありがとう・・・!!」

この日から、俺の人生は大きく変わることになる。


「・・・・・・・・。
 私には帰る場所がないよ・・・・。
 あそこは私の居場所じゃないよ・・・・。
 ・・・・偽りの故郷・・・・。」

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