《MUMEI》 今日の天気は・・「晴れのち曇りのち晴れ」僕は今、彼女の柚子とデートをしている。 今いるここは、遊園地。 グリーンランドである。 ここは、名前の通り、緑が多い自然豊かな場所である。 「ねぇ、あれ乗らない!?」 「え!?どれどれ??」 柚子が指していたのはジェットコースターだった。 実を言うと僕は、ジェットコースターは苦手だ。 別に怖い訳じゃぁない。 ただ、これには、華恋といった、 遊園地の出来事に理由があった。 あれは、夏の暑い日だった。 「ねぇ、廉くん、あれ乗ろう!!」 「いいよ!!」 そう言って僕たちが乗ったのは、ジェットコースター。 この頃の僕はまだジェットコースターは大好きだったのだ。 「安全レバーを下げてください。」 アナウンスが流れる。 そして僕たちは、レバーを下げて、準備万端だった。 さぁ、ジェットコースターは動き出す。 「きゃぁぁぁぁ!!!!」 落ちると同時に、後ろから悲鳴が聞こえる。 その時だった。 僕が大事に持っていた、お母さんに買ってもらった クマのぬいぐるみが落ちてしまった。 ジェットコースターを降りた後、探しに行ったが、 とうてい取れるところではない。 「・・・・僕のクマさん・・・。」 今思うと、とても馬鹿らしいのだが、 あの時は、本当にクマさんが大好きだったのだ。 だから、ショックはとても大きかった。 あれから、僕はジェットコースターが大嫌いだ。 なにか、大事なものを失いそうで恐いんだ。 華恋との別れもそうだった。 華恋を傷つけてしまった日の、一週間前。 僕たちは、遊園地に行った。 華恋はお決まりのように、 ジェットコースターに乗ろう!と言った。 そしてその一週間後。 僕は華恋を失った。 僕は思った。 これに乗ると、今度は柚子を失うんじゃないかと・・・・。 しかし、柚子はものすごく“乗りたい”という顔をしている。 [・・・こ・・断れない・・・。] 僕は仕方なく、 「いいよ!乗ろう!!」 と、言ってしまった。 僕は言ってから、とてつもない不安と後悔で 胸が押しつぶされそうだった。 ジェットコースターに乗れて、満足気な柚子。 僕たちはその後、ソフトクリームを食べた。 「おいしい!!」 そういって食べる柚子は、チョコソフト。 「そうだねぇ!!」 そういって食べる僕は、抹茶ソフトだった。 このときの、ソフトクリームは、少しぬるく、 最後のほうは、だいぶ溶けてきていた。 僕たちのデートはもう、終盤に来ていた。 最後に打ち上げ花火を見て僕たちは帰った。 何事もなく終わると思っていた。 僕たちは本当に些細なことで喧嘩した。 本当に小さいことだった。 ・・・・なんで喧嘩になったんだろう・・・・? ・・・・ジェットコースターに乗ったから・・・かなぁ・・? 帰り道僕たちは一言も喋らずに、 お互い向き合うことも無く、無言で帰った。 「最悪・・・・・・。」 僕は家に帰ってつぶやいた。 「何がしたいんだろう・・・僕は・・・・?」 今日の僕の天気は、 晴れ のち 曇り のち 晴れ のち・・・・・・ 雨 前へ |次へ |
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