《MUMEI》
オネスティ01
月明かりすら閉ざし、
パソコンの気化熱がこもった部屋。
外の寒さなどココでは関係ない事。

根拠のない苛立ちがイズルの中でループする。

もちろん、さっきまで居たケンゴの姿はもうココにはない。
ケンゴが居た場所だけがポッカリと、穴が空いて何もない。

自分と同じ。
思わざるを得ないような不在の空間。雑多に並んだ、あらゆる事物の中、その空間だけが、ひとり。

「イズル、ご飯よ〜。」
「お兄ちゃん、食べよ〜!」
遥か遠くに感じる下の階から母親の声と妹の声が聞こえる。

今日もまた、その呼びかけに応えることはない。

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