《MUMEI》
オネスティ02
イズルは家族の楽しそうな声を断ち切るように、
テレビゲームを始める。格闘ゲームを朝までネット対戦して一日を締めくくる。

今日の対戦成績は、負けが先行している。
イズルは、ケンゴに言われた一言が気がかりになっていた。

「オマエも、もっと強くなれよ。」
今の自分に言われているようで、イライラしてきた。


「あー畜生!!」

投げつけたコントローラーは、
ケンゴが座っていた場所に弾んで落ちた。

諦めたように大の字になって、目を閉じればケンゴのセリフがめぐる。


さすがに熱くなった部屋の窓を開けた。
吹き込む風は冷たい。

月の灯りが眩しくてかざした手の、
指と指の間をすり抜けた風は心地よく、イズルから苛立ちを盗むようだった。

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