《MUMEI》 彼は動かずに、マトモに受けた。当たった頬が赤くなる。 相手は笑い、楽しそうにもう一発と拳を振り上げた。 振り下ろされたそれを、今度は受け流した。 予想外だったのか、前によろける。こちらを見た顔は、血が上っていたのか赤かった。 隣にいたエルフ--Bとしておこう--が、掴み掛かってきた。 伸ばしてきた手を払い飛ばす。 姉の方に目をやる。絡まれているのに逃げず、怯えながらも裾を放すことは無いようだ。 目が合い、彼はとりあえず頷いた。 お返しに彼女は首を傾げた。場を見て察し、離れてくれるとありがたかった。 もう一人のエルフ--こいつはCとする--は、彼めがけて体当たりしてきた。 向かってくるCの肩に手を置き、押して軌道を逸らす。 身構えていなかったCは前のめりに転んだ。 Aは何を思ったのか、後ろに下がって距離を置いた。手のひらを彼にかざし、早口に何かを言っている。 Cに続いてBが殴りかかる。どうやらAの行動が見えてないらしい。 前へ |次へ |
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