《MUMEI》

危険とみたか、急に慎重な動きになる。後ろに下がって間を広げる。

そこへ後ろから大声が聞こえた。さっき何かしてたAが出したのだろう。

Bはすぐにその場を離れた。Cも離れる。

直後、Aの向けていた手のひらから火の玉が出現した。

「はぁ!?」

思わず叫んでしまった。いきなり火の玉が出てくるとは予想していなかったから。

結構な速さだ。しかし避けれない速度でもない。現に周りにいるギャラリーは退避している。

だが、彼はそれを受け止める事にした。

理由は簡単、後ろに姉がいるからだ。まだ裾をしっかりと掴んでいる。

目前に迫っている。腕で顔を庇えるように、身構えた。

目を閉じた直後、圧倒的な熱量と衝撃が、彼の腕と顔を焼く。

歯を食いしばり、耐える。火炎は一瞬だけだったようだが、尋常ではない体温になってしまった。おまけに皮膚が炭化したり、ただれたりしている。

戦えるかと言えばNOと答えるしかない体だ。

後ろを向き、文句などを言いたい所だが、見る限り彼女に怪我などは無い。

彼はそれで良しとした。

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