《MUMEI》
オネスティ03
小さな事で、イライラしてる自分を
笑うように照らす月。
光合成のように、苛立ちが酸素のように開放される。

イズルは
しばらくの間、月光浴を楽しんでいた。満月には足りない灯り。


ふと見ると、
月が照らした不在の空間に、見覚えのある細い布が落ちていた。
それは、ケンゴがこの部屋を出る時に落とした細い布だった。



「……そうか。」

イズルは、それが何かをすぐに理解した。
すくい上げたその刹那、セリフが巡った。



・・・オマエも、もっと強くなれよ。・・・

「まだ、間に合うか…」

イズルは月の湖からすくい上げた布を握りしめて、ケンゴのもとへたまらず駆け出した。

わずかにかかっていた雲は晴れ、部屋を強く照らし続けた。

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