《MUMEI》
忘れたい過去
 
 
──あれは小学校の低学年だった。


原因が何だったのかは、覚えていない。


兄が怒るときは大抵、自分の思い通りに私が動かなかったときと、私が自分の意見を言ったときだったから、この日もそのどちらかが原因だったのだろうとは思う。

「おまえケツ出して、そこに四つん這いになれよ」

散々、私を叩いた兄は、今度はベルトを手に持に持ち、言った。

「…よ…、よつんばいって…なに…?」

「はぁ?おまえそんなこともわかんねぇのかよ!」

「ひ…っ!」

兄にすごまれただけで、体がすくむ。

「ごめんなさいっ」

私は兄を怒らせるのが怖くて、気付けば「ごめんなさい」が、口癖になっていた。

「両手両膝ついて犬みたいな格好しろって言ってんだよ」

もうこれ以上、叩かれたくなくて私は、兄に言われるがまま、四つん這いになった。


兄は四つん這いになった私を見て、小さく笑うとベルトで、私を叩いた。

「きゃあ゙ぁあッ!!」

乾いた音と私の悲鳴が、家中に響いた。
それでも兄の手が止まることはなく、私は謝りながら叫んだ。


やがて意識が朦朧としてきて、私は失禁した。


兄が私の髪を掴んで笑う。

「汚ぇな」

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「許して欲しいか?」

私が頷くと兄は「じゃあしゃぶれ」と、言って座った。
兄のズボンから兄自身を取り出し、私は夢中で舐めた。

「ちゃんと飲めよ」

「…はい」










…──あの頃から、私は兄に逆らわないようにしてた。
口を使って兄を悦ばせれば、失禁してしまう程の苦痛は与えられずに済む。


もう痛いのは嫌だ。
そう思っていたのに…私はもう、自分の意見も言えない子供じゃないのに……






眞季相手でも、あの頃みたいな反応をする自分体が情けなくて、悔しくて涙が止まらなかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫