《MUMEI》
理解
眞季の細い指が私の髪を撫で、佐野さんにも僕にもできたから大丈夫だ、と言った。
痛いとか恥ずかしいなんて気持ちは最初だけだから、と。

眞季の言葉が、自分がしたことを償え、と言っているように聞こえる。


私のしたことは、最低。


そんなことわかってる。兄に解放されるまでの間、ずっと辛かったから。
眞季も佐野さんも、あの頃の私と同じだったと思う。


けど私は同じことをして、償う覚悟ができなかった。

「そ…そんなことしたら、警察に言うからね、あんたがしようとしてるのはレイプよ!犯罪だってわかってる!?」

「そっか、そうなんだ…」

眞季は寂し気に、そうに言ったかと思うと微笑んだ。

「陽菜はそんなこと考えてんだね…さすがだなぁ…しっかりしてんね…… じゃあ、そんなことできないようにしなきゃね」

眞季の言葉に愕然とし、同時に恐怖を感じた。

「ありがとう、陽菜」

眞季はそう言うと、抱きついてきた。

「いやぁあああっ!!」

「もう恥ずかしがらなくていいんだよ?僕は陽菜の全部を見ちゃったんだから……」

眞季の思考が理解できない。


どうして「ありがとう」なの?

どうしてこんなに抵抗してるのに、恥ずかしがってると思うの?



いくら考えても、答えなんかでない。
寧ろ答えを探す余裕なんて、私に残ってない。


とにかく眞季から離れたくて、力の限り暴れていると、下半身に硬いモノを押し付けられ、私は硬直した。

「どうしたの?まだ挿れてないよ?」

眞季の言葉で下半身に押し付けられたモノが、眞季自身だと確信した。

「なんでもする、から……なんでもするから、そこだけは…お願い」

いくら暴れたって、眞季は動じない。
だったら下手に出てみよう、そう思って眞季に頼んだ。


叩かれるのは我慢する。
けど体だけは、守りたかった。
やっと兄たちから解放されて、初めて自分で相手を選べると思ったのに…、こんなの…嫌…。

「……わかった…じゃあ、今から手解いてあげるけど…そのまま逃げようなんて考えないでね?僕から逃げるなんてできないんだから」

良かった…。
ちゃんと頼めば、眞季も理解してくれるんだ…。


私は少し安心して頷いた。

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