《MUMEI》
オネスティ05
「おい…ケンゴ!…ちょっと待ってくれ!」

「イズル、どうしたんだ!」

「待って…く…れ。」

息切れが止まぬ中で、肩で息をする。
まるで、馬跳びのようなスタイルから、右手に掴んだものを差し出した。

「………コレ。」

「うん。」

「…オマエ…ワザと…ワザと落としたろう…」

「うん。」

「ふざけんなよな。」

「ごめん。」

「コレ!ハチマキ、ワザと落として行ったろ?」

「そう、やっぱバレてた?」

「当たり前だろ!」

「ごめん。」


「いや、コレのお陰で分かったよ。あのセリフが子供の頃の自分のセリフだってこととか、生きてる意味とか。」

「そっか、良かった。嬉しいよ。」

「なんだよ、何かやけに素っ気ないじゃねえか。」

「いや、イズルとこんなに話したの久しぶりでちょっと、感動しちゃったんだ。」


ケンゴの小さな目の中に光るものがあった。

「何かオレ、オマエにすごく迷惑かけてたみたいだな。ごめん…」

ケンゴの目の中にあったものが真っ直ぐに落ちた。
その合図とともにケンゴの涙が次々とつたい落ちた。


見るに見兼ねて、イズルはハチマキを巻いて言う。



「オマエも、もっと強くなれよ!」




2人は、緊張の糸が切れた様に大笑いした。

近所の親父に、ものすごく怒鳴られたが走って逃げ帰った。



月光の中、ハチマキはイズルの心に刺した旗のようになびいた。

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