《MUMEI》

怯んでいる暇は無い。顔を上げ、周りを警戒する。

気付けば皆、呆然と立ち尽くしていた。そんなに酷い顔になってるのか。

Aがたじろいだが、また手のひらをこちらに向けた。

悪いと思いながら彼女の手を払い、正面に全力ダッシュ。

「おあいこって事で!」

不意の事に反応出来なかったAは、10mぐらいの距離を一気に駆け抜けてきた彼に顔を殴られた。

ぶっ飛ばしたのを見ずに、すぐに姉の方に引き返す。

案の定、彼女は戸惑ってばかりで棒立ちだった。あうあうしてるのも可愛い。

あまり長居は出来ない。沢山の観客が居たとはいえ、これ以上見られるのはよろしくない。

彼女の手を取り、立ち去ろうと歩き出すが、彼の腕を見た途端に止められた。

すごいしかめっ面だ。焼けた腕に手をかざし、早口に何か言い出した。

それと同時に、微量ながら痛みが引いてきた。心なしか、手のひらから緑の光が出ている気がする。

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