《MUMEI》
イラナイ…
気を失ったジェルマ
をベッドに横たえて
傍らの椅子に腰掛け
るケイン。

血の気を失ったジェ
ルマの目尻から涙が
一筋流れ落ちる。

譫言のように繰り返
し呟かれた言葉。


『イラナイ…ボクナンテ…
イラナイ…イラナイ…イラナイ』


その呟きは、自らを
否定する言葉で…ジ
ェルマの心の傷の深
さを思い知らされる


『…っ、ジェルマ』

目尻から耳元へ伝う
涙を指先で拭い去れ
ば、伏せられていた
睫毛がピクリと揺れる

そして、ゆっくりと
開かれた瞼は、虚ろ
で暫く宙を彷徨う。


『ジェルマ?』

穏やかに声を掛けれ
ば、ロイヤルブルー
の眼がこちらに向い
た。


『……ケイン?…ボクハ
…?…ア、アアアッ…』

突如、その眼から涙
が溢れ出し、ベッド
から跳ね起きる。

『おい?ジェルマ?
っ、お前、どうした
んだ?』

伸ばした手から逃れ
る様にジェルマは、
ベッドの端へと身を
寄せる。


『触らないで!僕な
んかに触れると、ケ
イン、貴方まで禍(わざわい)に巻き込
まれてしまう…』

両手で髪を掻きむし
り、頭を左右に振り
ながら、呟き続ける


『僕に関わったから
罪の無い修道院の仲
間や大修道師長様が
死んでしまった。
ケイン貴方だって…
僕なんか生まれて来
なければ良かったの
に……そうだ!ねぇ
ケイン。』

ジェルマは、動きを
停めてケインを見上
げる。

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