《MUMEI》

『お願い!その剣で
ケインの手で…僕を
ーー殺して?』


思い詰めた眼差しを
ケインに向け悲しげ
に微笑むジェルマ。


『ケインになら、僕
は殺されても……』

ジェルマの言葉を遮
って、ケインの怒声
が響く。


『ふざけた事言って
るんじゃねぇよ!』


ジェルマの顎を乱暴
に掴み上げ、自らの
視線をジェルマに合
わせる。


『俺にお前を殺せだ
と?ジェルマ、本気
で言ってるのか?』


乱暴な態度と裏腹に
ケインの言葉は微か
に震えていて弱々し
い声音(こわね)だ
った。


『…っ、でも…僕は
こんな僕はイラナイ
んだ。誰も僕なんて
イラナイ…実の親だ
って見捨てたのに…
っ、くっ…うぅっ』


泣き崩れるジェルマ
を無言で見ていたケ
インが、次の瞬間、
悲しみ全てを包み込
む様にジェルマを懐
深くに抱きしめた。


『…っ、え?』

急に抱きしめられた
ジェルマの顔の前に
は、ケインの逞しい
胸板があり、少し戸
惑ってしまったけど
ジェルマが一番驚い
たのは、自分を抱き
しめるケインの腕が
震えていた事だった


…え、何で?いつも
自信満々な態度で嫌
みな位のケインが震
えてる?どうして?
さっきまでの涙は止
まり呆然として考え
込んでしまった。


『馬鹿野郎!勝手に
死にたいとか思って
んじゃねぇよ!』

そう言ってケインに
痛い位にきつく抱き
しめられる。

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