《MUMEI》

七生にやっと解放された。カッとなるとすぐ体で表現してしまうのは七生の悪い癖だ。
締められた体の節々が痺れた。


「痛かった?」


「あと重かった。」
潰れるかと思いました。



「……なぁ、木下二郎という男が好きな俺でも幻滅しない?」


「……しないよ。
色んな人がいる訳だし。でも俺は七生に応えてあげられない。やっぱり女の人が好きだから。」
羽交い締めにしたときとは打って変わって俺の言葉に耳を傾けている。


「……わかった。」
七生がこっくりと頷く。
なんだか不気味な程静かになりそれがかえって俺の罪悪感やら不安感を増幅させた。

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