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《MUMEI》 そしてまた始まってしまう言い合い その様を眺めながら、雨月は溜息をつくばかりだ 「……雪舟、何とかしてはもらえませんか？」 「面倒だな」 「ですが、このままでは事の説明なんて到底できませんよ」 「ならお前がやればいいだろう」 「御免被ります。噛みつかれそうですし」 「何だ、それは……」 結局、雨月にその役を押し付ける事に失敗した雪舟 仕方なく、未だ言い合いの最中にある桜井達の元へ 「……お前ら、少し黙れ」 低く一喝すれば言い合いはピタリと止まる だが止まったのはほんの一瞬で また喚き合う事を始めてしまっていた 「……馬鹿共が」 どう収拾を付けるべきか 眉間に明らかな皺をよせ、暫く考え今田雪舟が、徐に桜井の腕を引いた 「わっ!?」 「黙れ。それ以上騒ぐとその口、塞ぐぞ」 言葉通り、本当に触れてしまいそうな程間近まで唇が寄せられ 桜井は驚きに口を噤む 思惑どおりにいった事に雪舟は口元を緩ませ踵を返す 「行くぞ。ひまわり」 ごく自然な動きで手が取られ、桜井は外へと連れ出される 外は嵐 立っているだけでもやっとだというこの状況で一体自分に何ができるというのか 解らず、そしてどうする事も出来ず空を仰ぎ見た 黒い雲、吹きつける風 渦巻くそれらをまじまじと眺め見てみれば その中に、まるでパズルのピースの様な細々としたものが大量にある事に気が付いた 一体何なのか、雪舟へと問うてみれば 「それは恐らく、天気を構成する欠片共だ。その欠片は儂らにはみる事は出来んが」 「そ、そうなの？」 「天気を見守る(ひまわり)にのみ見る事が出来るモノらしいからな」 言いながら雪舟は桜井へと目配せをしてみせる ソレが何を意味するのか、逸早く気付いたのはやはり敏い雨月 「な、何？」 雪舟と雨月、二人から眺められ、桜井は居心地の悪さを覚える 一体何なのか、問う事を改めてしてみれば だがどちらかが答えるよりも先に 空からないかが降ってきている事に気付く 一体何なのか 手の平に振ってきたそれを見てみれば 小さく渦巻く台風の欠片だった 「コレ、何？」 不可思議なそれに、桜井が小首を傾げ雪舟へと問う事をしてみる 次の瞬間 サクラの手の上のソレが飛び出して行ったのをまるで合図に 其処にあったそれらが一斉に飛散した 「……散らばっちゃった」 どうする事も出来ず、唯呆然とその様を見るしか出来なかった桜井 傍らで眺めていたらしい雪舟が徐に深い溜息をつく 「……これはまた、見事に飛散してしまいましたね」 「？」 「あれ、早く回収しないと一つ一つが成長して大変な事になりますよ」 穏やかな口調はそそのままに恐ろしげな事をさらりと言ってのける 桜井は暫く驚きに口元を引き攣らせ、何を言って返す事も出来ずに居たが 徐に踵を返した 「歩さん？」 どうかしたのかを問うてくる雨月 桜井は走り出しながら振り返り 「あれ、捕まえに行くの！」 飛び散ってしまったかけらたちを追い始めていた 雨月が止める間もなく、桜井はソレを追い掛けて外へ 困った様子で雪舟の方を見やる 「嗾けて、しまいましたかね」 「馬鹿なだけだろう。後を追うぞ」 ハルと早雲も呼んで来い、との雪舟へ 頷いた雨月が身をひるがえしたのを確認すると 雪舟はそのままゆるり歩き始め、桜井の後を追うたのだった…… 前へ |次へ |
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