《MUMEI》
無い物ねだり
 
陽菜が僕の秘密を知って、僕を避けだした日から僕の妄想は、どんどん膨らんだ。

いつも一緒にいたのに、目すら合わせなくなって、名前も呼んでくれなくなった陽菜…。


あの頃は僕を避ける理由が、わからなかった。

僕を嫌いになったんじゃないか、とか考えて不安になったりもしてた。

けど不安と同時に、快楽の妄想も広がる。


今、陽菜に無理矢理キスしたら、陽菜はどんな反応するだろう…。

怒って僕を叩くかな…。
泣いて嫌がるかな…。



怒ったり泣いたりする陽菜を想像するのは、すごく気持ち良かった。



高校の受験が終わったあとも、僕の存在に気付いた陽菜は、僕を怯えた目で見てた。

陽菜の怯えた目も、震えた声も可愛くて、僕は想像の中で陽菜を虐めた。


本当の陽菜は、泣き虫で弱い。


だから今、僕の目の前で僕に懇願する陽菜は…、僕の顔色を伺う陽菜は、陽菜の本来の姿だけど…


これが本当の陽菜だけど…










『これ穿きながらエッチなこと考えてるんでしょ?てか、このカッコじゃなきゃ興奮できないとか?』


『ほら…おっきくなってる』


『アンタって顔に似合わず大きいよね…パンツ破れちゃうかも〜』


いたずらっぽい笑みを浮かべて、僕の下半身を弄ぶ陽菜が、僕の頭に浮かんだ。



泣き虫な陽菜も好き。


だけど僕を虐める陽菜も、好き…。





「ねぇ、陽菜…尻尾つける前にやることがあった」

陽菜が怪訝な顔で、僕を見た。

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