《MUMEI》

「待って二郎!」
部室に向かう俺を追いかけて、鞄を担いで七生が走って来た。


「すっかり元気だな。」
南に習って厭味の一つでも言ってやりたいね。


「え?心配してくれてた?」


期待の眼差し…………


「違います〜!
早起きとか慣れないこといっぺんにするから体調崩したんじゃねーの?」
俺はこんなことでなびかねぇんだよ!


「…………早起きじゃない」


「じゃあ何?」



  「…………………」
押し黙ったまま話さない。


「へぇー。俺に言えないやましい事なんだ。

ふーん……ばいばい。」
歩幅を速めて離れる。


「違う違う違う!……聞いても  み、見損なわない?」
鞄をがっちり掴んで引き止められた。……豪腕め。
必死な顔をしてるところを見ると、悪気はないのだろうけど。


「内容による。」




「……牛乳飲み過ぎて腹壊した。規則正しい生活も手伝ったようで、腸が非常に整った。」
顔が、赤みを帯びてきた。

「七生、牛乳嫌いだったんじゃ ……あ。」
俺がチビって言ったからか?


「背とか伸びて、見直してくれたら惚れて貰えるかなって……」
少し口を尖らせて小声で話してきた。
あまりに真面目に答えてきたから返事に戸惑う。ここまで馬鹿だとは……!


「……呆れた。」
なんにも分かっていない。

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