《MUMEI》









「がさつな女…」








開けっ放しになっている引き戸を眺め、呆れたようにため息をつく


シン………、物音ひとつこぼれなくなった空間に一人、仰向けになり天井を見上げた。
















(愛してるわ。千尋)


とても優しい笑顔、

だけど







(だからあなたも愛さなくちゃいけないの私を…)
(どうにもならないのよ?何も出来ないのよ?)

(私がいなくちゃあなたの存在理由なんてガラクタだわ)








歪んでた









(ねぇ、絶望の色って知ってる……?)










綺麗な髪が嫌に脳裏に焼き付いた。
絡みついて絡みついて、身動きが取れなくなるほどに内側から支配されていく…
















「…クソッ」













瞼を閉じた。

苛立ちは募る一方、もう顔も思い出せないくらいに曖昧なのに……



それでも確かに残るのはあの長く綺麗な髪…。






















(愛してるわ)






「何を」













あの人の言う《愛》は一体―――――、














「何なんだろう………」
















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