《MUMEI》
リトル・クラウド01
残り香がする給水塔の上。あぁ、忌々しい。
寝そべって目を閉じると、あのウィンクが悪夢のように登場する…あぁ、忌々しい。
イズルは急いで目を開けた。


目を開けて、気が付いたこと。
目の前に広がる規則的に波打った雲。


「そっか〜このタメに来たんだっけか…」

隣町までつながった雲。
(…あぁ、この雲なんて名前なんだろうな…)
何気なくそんなことを一瞬だけ考えた時だった。



「うわ!?すっごい、サバ雲〜!」


イズルは心が読まれたかと思って、
焦って跳び起きて声の主を見た。

「わっ、ごめんなさい!もしかして、起こしちゃった?誰も居ないかと思って大きな声だしちゃって…」
オドオドと恥ずかしそうに体を丸める少女。


その仕草にイズルも少し恥ずかしく、うつむいた。
とっさに、落ちてもいない小石を数えるフリをした。

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