《MUMEI》
すれ違う心
忘れるわけない。


あの日、どれだけ恥ずかしかったか…。

もう誰も…眞季以外の人なんか信用しない、そう決めた私の周りからは友達が減っていった。

みんなが陰で、私のことをなんて言ってたかも、知ってる。

「僕は陽菜のことを…ずっと見てたんだ…」

眞季が言った。

「小学校の頃、転校してきた陽菜を初めて見たときは天使って本当にいるんだと思った…一目惚れだった」

一目惚れ…?

「僕だけじゃない、佐伯くんたちだって…みんな陽菜が来てから陽菜に夢中になった」

あぁ、そうか…。
眞季は昔から周りが見れなかったんだ、そう思った。


だって、佐伯が私に好意を持っているように感じたことは、一度もなかったから。
それに私は、佐伯に酷いことを言い続けてきた。
彼がプライドの高い人間だと、知りながら…。

「明るくて可愛くて頭が良くて強い陽菜は、いつだってクラスの中心にいて…」

そんなことない。
私はずっと陰で、悪く言われてた。

「大人たちだって、みんな可愛いお嬢さんねなんて言ってた…陽菜は僕と住む世界が違った…僕は陽菜と違って、みんなに気持ち悪がられてたから」

違う…。
違うよ眞季…。

私は、みんなに好かれてたわけじゃない。
私はずっと、付き合いづらいって言われてきた。

『変な子だ』って…。
ただみんな、はっきり口にしないから、眞季は気付かなかっただけ…。


眞季は気持ち悪がられてたりなんか、してないよ…。

「陽菜は、いつも僕と一緒にいたのに…いつも遠くにいた…」

違う…。
私はいつも、眞季の傍にいた。
誰も信用できないなんて思っても、眞季だけは信じてた。

「だからずっと陽菜の幸せを願ってた…大人になったら僕みたいのじゃなくて、もっと男らしい人と結婚して幸せになってくれたらって…」

眞季の悲しそうな目を見てると、切なくなった。


私は眞季がいればいい、そう思ってたのに…。

あの日、眞季のあんな姿を見てなければ、今頃……

「でも、あの日…僕が陽菜のパンツを盗んだ日、僕の気持ちは変わったんだ」

眞季の目が、暗く虚ろになった。

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