《MUMEI》
帰り道
「ゆ、優香ってこういうの好きだったんだ?」
二人きりの帰り道。
『女の子が一人で夜道歩くのは危険だから』
井上の提案で、男子は女子を家迄送り届ける事になった。
洋平は美樹を、井上は真弓を、そして運が良いのか悪いのか、司は優香を送る役になったのだ。
「こういうのって?」
「肝試しとかさ…」
普通に喋っているつもりが、何故だかソワソワしてしまう。
司は何処を見て良いのか分からず、取り敢えず空を見上げながら話す。
「ん〜、どっちかって言うと好きかな?怖いもの見たさってやつ。」
「そうなんだ…」
「司君は?」
「へ!?あ…俺も好き、かな…」
本当は大の苦手だ。けれどそんな事恥ずかしくて言えるはずもなく、嘘を付いてしまった。
「明日、早速写真現像してくれるって言ってたし、楽しみだね!」
「洋平の奴、張り切ってたもんなぁ。」
「心霊写真あったらいいね!」
「ハハ…そだね。」
嘘なんて付かなければ良かった…
優香の笑顔を見たらそう後悔させられた。
「今日はありがとね!」
「あ…うん。」
いつの間にか優香の家の前に着いていた。
「折角二人きりになれたのに、何してんだか…」
司は一人家路に着きながら、自分の根性のなさにため息をついた。
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫