《MUMEI》 天使と悪魔季節が冬になり、街の皆がクリスマスイブだと騒ぐ日…。 一人の少年は近所のデパートの外でかれこれ2時間近く待っていた。 『今年もやっぱり来ないのか…』 この少年、赤坂日陰は毎年付き合っている恋人にクリスマスイブの約束を忘れられる。 もうお決まりの事なので、彼は帰り道に足を向けた…。 彼は神に見捨てられたかの如く運がない。 彼自信も自覚している、だが特に何をするでもなしに生活しているだけだった… そんな今日もまた変わりない一日だった。 次の日、街はいよいよクリスマスで盛大に賑わっている。 日陰はケーキ屋に立ち寄り、三角形のイチゴショートケーキを買った。 帰り道…またしても、不運な事に石につまづきケーキを無駄にした。 『あ…』 箱の中身はもう無事じゃない。 そこに一匹の猫がきた。 『これ、落としちゃったけど…いる?』 日陰は猫に無惨な形のケーキを差し出し 苦笑すると家の方角に歩いて行った。 暇潰しに家の手前の公園に寄り、ケータイを開けた。 すると、ふと上から声が聞こえる。 「久しぶりだな…サリエル」 聞き覚えのない声に振り向くと そこには、漆黒の羽根を生やした男が立っていた。 『…誰だ、君は?』 日陰は目の前の怪しい風貌をした男に聞く。 すると、男は質問に答えず話続ける… 「なぁ、今までなにしてんだよ?俺…100年以上もお前を探し続けてたんだぜ…!」 日陰は言っている意味が分からないといった感じで答えた。 『君の事は全く知らない、人違いだろう。』 すると、男は驚いたように言う。 「まさか、覚えてないのか…俺の事を!!」 『覚えてる…だって、会ったこともないのに知るわけないじゃないか。』 「あ、あぁ…そうだよな。人間になる前の話なんか…」 そういうと、男は純白の羽根を出した。 『なんだ、それは。』 「お前の羽根だ…今日が復活の日だから持ってきたんだよ、俺は悪魔だ、お前は天使だったんだ……天界に戻らないか?」 日陰はまさか自分がと思い、目を伏せている… だが、悪魔は淡々と話す。 彼が悪魔の罪を庇って人間になった事も… それを聞いた日陰は言った。 『でも、俺には君との記憶もなにも無い…』 「元に戻ればきっとお前は思い出すんだ。」 『試してみるか…?』 「ああ、だが…お前は今の自分じゃなくなってもいいのか?」 『君の大切なものを取り戻せるなら、構わない』 「…やっぱりお前はサリエルだ、サリエルが天界から消える時も俺に言った…」 『そうなのか。』 「そうだ、お前は何になっても変わらないかすぐ分かる。」 『そこまで言われたら運命かと思ってしまうな…』 「多分、運命だぜ」 悪魔が日陰の胸に手を当てると風貌がみるみる内に変わっていった。 「…サリエル…?」 『…ありがとう、ルシファー…』 「ああ!…戻ってきてくれてありがとう…!!」 悪魔は一筋の涙を流して天使を抱き締めた。 100年の間、離ればなれだった優しい天使と悪魔はクリスマスの日に無事再会した。 『この少年はとてもいい人間だ。』 「そうだな。」 『…そろそろ外に出ないと、この少年は私の一部になってしまう…』 「でも、そんなこと…まだ体が…」 『この体から出て神様に頼んで来るんだ…きっと用意してくれるよ。』 「…無理だ…!」 『大丈夫、ルシファーのしたことは神様がちゃんと見てくれてる…先に行ってるから。』 「あ…サリエル…!!」 二人はきっとこれからもずっと一緒だろう。 運命は本当だと信じたい… それからどれくらいの時間が経ったかは定かではないが日陰は目を覚ました。 辺りにはほんのりと雪が降り積もっている。 「おい、起きろ…」 『…ん…一体、今までどうしてたんだ…』 「…サリエルが復活した、本当にありがとう。お前が決断してくれなかったらあのままずっと見つからないかも知れない。」 『あぁ…とりあえず、良かったな…』 「じゃあ俺はそろそろ帰る。サリエルが先に行ったからな。」 『…分かった、さよなら。』 「さよならなんてないんだぜ?また会おう。」 そう言って悪魔は真冬の空に消えていった。 次へ |
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