《MUMEI》
助けた理由
放課後、俺は永倉の誘いを断りついこの間知り合ったばかりの雫との約束を優先した。

最近の雫はあの時から少し変わったような気がする、ぼーっとしている事も多いし、学校にも登校していないようだった…。

学園から三分ほど歩いた場所に中学校があって、そこで俺たちは待ち合わせをしていた。

他の生徒は出て来るがなかなか雫の姿は見当たらない。ふと正面を見ると、ちょうど雫は出てきた所だった…
だが、雫が此方に来る最中、横から大型トラックが走って来た。

『…!っあぶねぇ』
俺はとっさに走り出し雫を突き飛ばした。

だが、勢いよく飛び出した俺に気付く間もなく大型トラックは俺を跳ねた…

俺は50mほど飛ばされ道に落下した。
野次馬達が事故を聞き付けて次々と集まってくる。

俺の体は地面に叩き付けられた衝撃であらゆる部位から血が出ていた…

遠くで雫の叫びにも似た声が聞こえた。


『…っ…たく、あぶねぇな…』
俺は辺りを見回した。
どうやら俺は死んで無いようだ。

雫は隣に座って泣いている…
俺は雫の頭を乱暴に撫でて言った。
『今度から飛び出すなよ…しかし冷てぇなぁ…』

体から出た血が俺の服を真っ赤に染めていた。
こりゃ、替えのシャツは高くつくな…と考えながら立ち上がる

その時、救急車が来た。

『はぁ…めんどくさいのが来た。』

そう言い、雫の手を引くと救急隊員が慌てて言った。
「手当てしますから乗って下さい!」

『うるせぇ、俺は今から行くところがあんだ…いい。』
「ですが!」

『手当てなんかどうでもいいからシャツ代くれよ…』
そう言ってその場を去った。

こんな事があってから、時々思う…
俺はどうかしてしまったのかも知れない…
今までの俺なら考えられない事をした。
人を助けたって事も。

それにひかれても死ななかったったって事が今でも信じられねぇ…。


そしてこの少女との出会いが大切な事だと
後で知ることとなる。

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