《MUMEI》

何とか地に這ったまま、羽野へと手を伸ばす
見開かれたままの眼、開き切った瞳孔は今、何を見ようとしているのか
近藤に知る術はない
何とか頬へと手を触れさせてやった、次の瞬間
羽野が唐突に身を起こしてきた
無感情に血塗れの自身を眺め、体外へと飛び出したままの内臓を
傷口を自ら押し広げながらまた戻す
そして虚ろな目の色のまま近藤の方を見やると、その腹を跨ぐ様に乗り上げてきた
「……秋夜」
壊れた人形の様なその表情は見るに居た堪れず
近藤は段々と薄れて行く意識を感じながら、羽野の身体を掻き抱く
「……守ってやれなくて、悪かった」
まるでそうする事が当然であったかの様に
近藤は自身の無力さを悔やみながら、そのまま意識を手放して行った……

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