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《MUMEI》 愛の育み何気ない入りから、二郎の話が日記には書かれていた。 篠さんの奥さんが亡くなって、悲しみや憤り、様々な感情が文章には、入り乱れていた。 『私には、彼女が必要だった。』 『無力だ、これから毎日、彼女の声も顔も微笑みかけることも出来ない。』 『残された時間の使い方を誰か教えてほしい。』 『どうして、彼女でないといけなかったのだろう、あんなにも必要とされた人間を奪っていくのだろう、理不尽だ。』 ｢すみません……俺を置いてください。床の角でいいです。｣ 私の世界に介入してきた、猫のような男だ。 借りていた家で揉めたらしい、元々、妻が本格的に入院する前の時期は部屋を貸していたが、妻が倒れて病床に伏してからは負い目を感じ、一人で暮らしていたのだった。 雨の中、少ない荷物を持った人間を見て、誰が見捨てられるものか。 彼を、よく見ると体中痣まみれだった。 どうやら、隣人と揉めたらしい。 揉めた…にしてはおかしい。よく見ると、手首、額に、首…… ｢やっ……！｣ 触ろうとした瞬間に、振り払われた。 ｢すまない。｣ ｢……こちらこそ。｣ 過敏になっているのか、気まずい。 ｢この部屋を使えばいい。｣ 妻が家に来たときの為の部屋だった。 こんなときだが、綺麗にしておいてよかった。 前へ |次へ |
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