《MUMEI》
リトル・クラウド02
おそるおそる顔をあげて、
少女は、うつむいたモルモットを見てつぶやく。


「あれ?湯上谷くん…?」


呼ばれて顔を見ようと前髪をかき分けるイズル。
記憶の検索エンジンにかけても、彼女の名前は出てこない…


大きな目を見開いてイズルを見つめる少女…
かなしそうな表情を浮かべた後で呆れ混じりに言った。


「かえでだよ!!桐島 楓(きりしま かえで)おんなじクラスでしょう??」

「そうだったっけか…」

「今日から11月になるっていうのに!?」

「そうだったっけか…」

「も〜湯上谷くんはそれしか言えないの〜?」

「そんなことはないけど…」


まあ、無理もない。
学校生活の中でのイズルの目線の行先は空と目蓋の裏側を行ったり来たりするだけ。
クラスメイトなど、誰ひとり覚えていない。

だけど今日、ひとり覚えた。

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